<週刊金融財政事情 2007年4月9日号 64ページ>


『地域金融機関のサービス・マーケティング』

住谷 宏 編著・全国信用金庫協会 監修

住谷宏・戸谷圭子・大塚英揮
木村純子・大崎恒次・三浦俊彦 著

顧客のロイヤルティを高める先進事例を分析

評者 大阪信用金庫理事長 目良紀夫

規制緩和を背景にした競争激化の影響で、信用金庫の人間はとかく規制緩和をネガティブにとらえがちである。規制緩和とは、利用者側が金融機関を選択する時代が到来したということであり、利用者のニーズや行動が変化するということは、とくに地域金融機関の場合、他行と同じことをしていることが最大のリスクという時代になったことを意味する。

このような時代に、地域金融機関がメルクマールとすべきは、まさにサービス・マーケティングにほかならない。

しかし、既存のマーケティングのテキストは理論中心のものが多く、考え方を学ぶことはできても、実践面での具体的なヒントを得ることは困難であった。

信用金庫双書の第二弾にあたる本書は、おもに信用金庫の役職員を対象に、地域金融機関のマーケティング概念の重要性をわかりやすく解説するとともに、サービス・マーケティングの導入・応用実践についても事例を中心に考察している。

とくに、五つの地域金融機関(東京スター銀行、大垣共立銀行、巣鴨信用金庫、水戸信用金庫、呉信用金庫)におけるサービス・マーケティング事例を「顧客に対してのメッセージ(エクスターナル)」「内部職員への理念等の浸透(インターナル)」「顧客との接点(インタラクティブ)」というサービス・マーケティング・トライアングルの枠組みを用いて分析・整理することで、地域金融機関の進むべき方向性を具体的に示している。

「マーケティング」というと「消費者に売り込むための販売手法」と考えがちであるが、本書は「顧客との関係作りを通じて満足を実現するための手法」すなわちリレーションシップ・マーケティングの面から解説しており、これからの地域金融機関のあるべき姿を考えるうえで、重要な示唆を与えてくれる。

また、後半の補論は、ボリューム的にはコンパクトではあるが、一般的なサービス・マーケティングのテキストとしても十分な内容となっている。

ところで、サービスをいろいろな角度から高度に検証している本書において、「特に大切なのは笑顔で、テラーが満面の笑顔で接客したら、多くの消費者は間違いなくその金融機関と取引をするだろう」との指摘に首肯するのは評者だけではないと思う。

これからのマーケティングは顧客満足だけではなく、満足の理由、そして行動を伴う顧客ロイヤルティの追求に目標をおくべきであり、さらに「顧客のロイヤルティを高める方向に向いているかどうか」が、企業行動のすべての判断基準になるとの視点は、地域金融機関の今後の課題を真正面からとらえている。

当り前のことではあるが、地域金融機関は顧客を選ぶ前に、まず顧客から選ばれなければならない。これからも変わることなく地域社会に貢献するためには、われわれ自身が変わらなければならないことも事実である。

本書には、地域金融機関のための多くのヒントが詰まっている。

(編著者は東洋大学経営学部教授)

近代セールス社刊・A5判300ページ
本体2,900円



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