<週刊金融財政事情 2003年7月21日号 32ページ>


『カスタマーセントリックの銀行経営』

戸谷圭子/栗田康弘著

 わが国の金融業で「顧客志向」の必要性が指摘されて久しい。本書の掲げる「カスタマーセントリック」(顧客中心主義)は「顧客志向」と何が違うのであろうか。

 本書は、まず、金融業が顧客志向の名のもとに、いかに誤ったマーケティングを展開してきたかを具体例で示してくれる。CSにいくら取り組んでもロイヤリティの高い顧客はつくれない、データベース・マーケティングで自行内にある既存データをいくら分析しても顧客を理解することはできない、顧客ニーズを無視した資産残高別のセグメンテーションは機能しない、等々。そして、金融機関は誤った思い込みでつくった商品・サービスを、お願い営業で顧客に販売してきたが、これはセールスであってマーケティングではないと断言する。

 本書が求めているのは、金融機関の考え方や行動の根底にある基本的価値観を「天動説=自社組織中心」から「地動説=顧客中心」へとコペルニクス的に転換することである。いち早く発想を転換し、マーケティング手法を確立した金融機関が勝ち組になるチャンスを手にする。

 では、金融機関はどうしたら顧客中心主義のマーケティングを確立できるのか。顧客に直接尋ねることがその出発点となる。しかしながら、「正しい顧客」に「正しい質問」をしなければ、正しい答えは得られない。本書は、すべての出発点となる「顧客を知る」ことの考え方とその方法について、豊富な事例を示しながら具体的に説明した、おそらく日本で最初の書籍である。本書が説得力に富むのは、著者が元銀行員で、金融マーケティングの最先端の研究者だからであろう。

 金融マーケティングの啓蒙書・入門書として、関連部門の担当役員、部門長はもとより、実務担当者にもお勧めしたい。

(評者・日本総合研究所 調査部長 高橋 進)
金融財政事情研究会刊
本体2,500円



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